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富山地方裁判所 昭和31年(ワ)151号 判決

原告

右代表者法務大臣

牧野良三

右指定代理人名古屋法務局訟務部長

宇佐美初男

同名古屋法務局訟務部第一課長 大野謙治

同富山地方法務局訟務課長 老田実人

同金沢国税局大蔵事務官 尾崎守

富山県婦負郡和合町布目三千五百五十一番地

被告

坂田征士

右法定代理人親権者父

坂田重吉

右同母

坂田はりえ

右当事者間の昭和三十一年(ワ)第一五一号詐害行為取消登記抹消請求事件につき、当裁判所は、次の通り判決する。

主文

別紙目録記載の不動産につき、被告と訴外大場敬次郎との間になされた昭和三十一年一月五日の贈与契約は、これを取消す。

被告は原告に対し、右目録記載の不動産につきなされた富山地方法務局東岩瀬出張所昭和三十一年二月九日受付第百二十二号原因同年一月五日贈与による所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

原告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求原因として、

一、訴外大場敬次郎は、昭和二十四年度以降より原告に対する所得税を滞納したので、原告においては次の如く滞納処分を執行して来た。

(イ)  昭和二十六年十二月三日富山税務署長は、昭和二十四年度乃至同二十六年度分所得税金六万七百六十円の滞納処分として、右訴外人所有の茶箪笥外六点の動産の差押をし、同二十九年九月二十四日同物件を公売処分に附し、

(ロ)  更に、同二十九年六月二十四日同二十五年度乃至同二十八年度分所得税金十九万七千五百十円の滞納処分として、右訴外人所有の田一反三歩の差押をし、同三十年十月二十七日右田を公売処分に附し、

(ハ)  県税滞納により富山県が、同二十八年三月三日差押えた右訴外人所有の別紙目録記載の不動産については、同二十九年六月二十三日上婦負事務所長に対し、税額十九万七千五百十円の交付要求をなした。

二、しかし、右訴外人においては、その後も原告に対する税金を完納しないので、原告の同訴外人に対する租税債権は、同三十一年一月五日現在で合計金三十一万七千五百三円に達した。

三、訴外大場敬次郎は、前記一、(ハ)の通り富山県より差押を受けた唯一の財産である別紙目録記載の不動産についても、遠からず公売されることを察知し、該不動産の所有権を身内の者に移転して原告の租税債権の徴収を不能ならしめようと画策し、僅少な県税(三万千二百円)が同三十一年一月十六日納入されて、富山県のなした右不動産に対する差押処分が解除されるや、直ちに情を知つた右訴外人の甥にあたる被告の親権者を通じて、被告に該不動産を贈与し、これにつき富山地方法務局東岩瀬出張所同年二月九日受付第百二十二号同年一月五日の贈与を原因とする所有権移転登記を経由した。

四、しかしながら、右贈与による所有権移転行為は、前記の経過に照し明らかな如く、前記訴外人の債権者を害する行為で、且つ同訴外人には他に財産がないので、原告は民法第四百二十四条により右贈与契約の取消を求めると共に、被告に対し前記所有権移転登記の抹消登記手続を求めるため、本訴請求に及んだ次第である。と述べた。

被告法定代理人等は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、且つ答弁書やその他の準備書面を提出しない。

よつて、被告においては、原告主張の事実を明に争わず、これを自白したものとみなすべく、右事実に基く原告の本訴請求は理由があるので、これを正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 布谷憲治)

目録

富山県婦負郡和合町草島字鶴田参百八拾弐番地

家屋番号 同所百六拾九番

一、木造瓦葺平屋建居宅 壱棟

建坪 参拾壱坪七合五勺

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